小林和作>エピソード
和作の優しさは
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小林和作 和作は子どもの頃から、ドモリというハンディーがあり、弱い立場の人にはとても優しく、例えば尾道ゆかりの日本画家・森谷南人子とは京都の絵画専門学校で先輩後輩の仲ではあったが、学校時代よりも尾道に来てからさらに親しくなった。
何故、二人が親しかったのか、南人子は小人症で子供くらいの身長しかなく、お互いハンディーを持つ者同士のいたわりがあったからではないか。
そして和作の交友関係には女性が多い。
それは色恋のためではない。生来のドモリという障害に苦しめられてきた和作は弱者に対する優しさ、共感といったようなものが身についていた。その優しさが弱者である女性を接近させたのだろう。生涯を通して彼が関わった女性は二人の夫人を除いて、全て弱者の境遇にある女性だった。
この優しさこそ、和作の人間像の核であろう。
「彼は零落の寂しさ、家庭の不幸を乗り越えて、さらに人間を成長させた。零落が芸術に与えた影響より、人間性に与えた影響の方がはるかに大きい。ドモリ、破産という負の体験を和作はまるで栄養源のようにして大きくなった。和作の芸術は常に人間が先行する。人間が成長して絵が進歩していく。和作という人間が先に存在し、絵は彼の足跡のように後ろからついてゆく。」、小林芸術の特質はまず人間・小林和作の魅力があって、次に絵がある。人間先行の人だった。(評伝237)
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