森谷南人子>エピソード
おわりに
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森谷南人子 「南人」とは、南の国に住む人の意。
「子」 「子」 とは、中国では孔子や孟子のように使われた本来は男子のことを、そして親しみを持って名に使われる。
 「南人子」とは、南の国の親しみをもって接してくれる住人という意味。

 これは、僕が勝手に考えた南人子の雅号の由来である。違えど遠からずとおもっている。南の国のキーワードは、南人子と雅号をさだめた大正初期ころは、ゴーギャンの南方楽園志向が紹介され、先輩画家土田麦僊などがその影響で作品を残していること。さらに小野竹喬らによる南画の再認識によって埋めれた新しい表現方法があったことである。ゴーギャンの南方楽園思考については、陶淵明の桃源郷と同様に、双方ともユートピア論の展開である。同時に南画にもいえよう。
 楽園は南にあるというニュアンスは、誰もが思う一致した意見だろう。もしも、南人子も本当にユートピア論者だったとすると、当然彼の風景画は理想郷を現わしたものとなる。ゴーギャンや陶淵明の表出した世界に通じたものといえよう。南人子は思ったはずである。理想郷とは、歩けばたえず傍らにある。そうやって、私なりに見つけた理想郷の姿がこれだと。
(尾道市立美術館 学芸員)
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